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管理監督者の判断基準は3要素|採用解雇の権限・時間の裁量・待遇

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この記事の結論

「店長」「主任」といった役職を与えるだけで、時間外労働の対象外にできるわけではありません。労働基準法第41条第2号の「管理監督者」に当たるかどうかは、役職名ではなく、採用・解雇等に関する実質的な権限、労働時間についての裁量、地位にふさわしい待遇という実態で判断されます。要件を満たさないまま管理監督者として扱うと、いわゆる「名ばかり管理職」として未払い残業代のリスクが生じます。

条文の根拠

労働基準法第41条

この章、第六章及び第六章の二で定める労働時間、休憩及び休日に関する規定は、次の各号の一に該当する労働者については適用しない。

一 (略)

二 事業の種類にかかわらず監督若しくは管理の地位にある者又は機密の事務を取り扱う者

第41条第2号に該当すると、労働時間・休憩・休日の規定(第32条、第34条、第35条等)の適用が除外されます。ただし、深夜業の割増賃金(第37条第4項)と年次有給休暇(第39条)は対象外です。深夜労働(原則22時から翌5時まで)には割増賃金が必要であり(最高裁 平成21年12月18日判決・ことぶき事件)、年5日の時季指定義務(第39条第7項)も同じく及びます。同じ適用除外でも高度プロフェッショナル制度(第41条の2)は深夜割増まで除外される点が異なります。

また、労働安全衛生法第66条の8の3による労働時間の状況の把握義務と、労働契約法第5条の安全配慮義務は免除されません。「管理監督者だからタイムカードで打刻させない」という運用は誤りで、健康管理のための客観的な時間把握はむしろ会社の義務です。

管理監督者性の判断要素

管理監督者とは、労働条件の決定その他労務管理について経営者と一体的な立場にある者を指します(昭和22年9月13日発基17号)。役職名ではなく、この一体性の実態が伴っているかを、主に次の3要素から総合的に判断します。

(1) 採用・解雇等の権限

アルバイト・パートの採用、人事考課、解雇(実質的な進言を含みます)について、経営者と一体的な立場といえる権限を持っているかが問われます。名目上の決裁権があるだけで実質的な関与がない場合は、否定的に評価されます。

(2) 労働時間についての裁量

出退勤の時刻を自らの判断で決められるかが問われます。タイムカードで一般の従業員と同様に管理され、遅刻・早退により賃金や評価で不利益を受ける場合は、実態として裁量がないと判断されます。

(3) 地位にふさわしい待遇

基本給・役職手当等が、時間外手当の不支給を正当化できる水準かが問われます。一般社員と比べて実質的な収入がほとんど変わらない、あるいは下回るケースは、否定的な要素になります。

具体的な着眼点は、昭和63年3月14日基発150号と、多店舗展開する小売業・飲食業の店舗について厳格な否定基準を示した平成20年9月9日基発0909001号が、実務上の判断基準として広く参照されています。

違反した場合の影響と罰則

管理監督者性が否定されたにもかかわらず時間外・休日労働の割増賃金を支払っていない場合、労働基準法第37条違反として、同法第119条により6か月以下の拘禁刑又は30万円以下の罰金の対象となり得ます。あわせて、過去の未払い残業代(第114条の付加金を含む場合があります)の支払いを求められます。

特に注意が必要なのが「役職手当を払っているから残業代は不要」という誤解です。関西事務センター事件(大阪地裁 平成11年6月25日判決)は、役職手当は職責への対価であって時間外労働の対価ではないため、未払い残業代への充当はできないと判断しました。役職手当を基本給に加えた高い時間単価で全額を支払うことになり、負担はかえって大きくなります。深夜割増の基礎単価からも役職手当は除外できません(第37条第5項)。

よくある実務事例Q&A

Q1 育児のため短時間勤務にした管理監督者の賃金を減らせますか

管理監督者は自らの労働時間に裁量を持つため、勤務時間を短くすること自体は裁量の範囲内です。問題は賃金で、一方的な減額は労働条件の不利益変更の問題が生じます。本人の同意を得たうえで、短縮された時間に比例する範囲で減額するのが基本です。ただし減額の結果、一般社員と比べて待遇が見劣りする水準まで下がると、(3)の要素で管理監督者性が否定される方向に働きます。

Q2 管理監督者の深夜労働を事前許可制にしてもよいですか

差し支えありません。健康確保と深夜割増賃金の適正な支払いのために労働時間を把握・管理することは、管理監督者性を否定する要素とはならないとされています(平成20年9月9日基発0909001号)。ただし、許可が下りず出退勤の時刻を自ら決められない実態になれば、(2)の要素を欠く方向に働きます。

補足:実務上の論点

部下を持たない本社スタッフ職(企画・調査等)を管理監督者として扱う場合は、経営上の重要事項の企画・立案・調査等を担当し、かつライン職の管理監督者と同格以上に位置づけられていることが求められます(昭和52年2月28日基発104号の2・105号)。役職者を管理監督者として扱っているときは、3要素を定期的に点検し、実態が伴わない場合は指定を見直す必要があります。

関連判例

日本マクドナルド事件(東京地方裁判所 平成20年1月28日判決)は、直営店の店長について、アルバイトの採用等に一定の権限はあったものの、人事考課や労働時間管理の裁量が限定的で、待遇面でも水準に達していなかったとして、管理監督者性を否定しました。ただし、結論は業種・店舗規模・実際の権限の程度によって異なります。

参考資料・出典

  • 労働基準法第41条第2号 ほか(e-Gov法令検索)
  • 労働安全衛生法第66条の8の3(労働時間の状況の把握義務)
  • 昭和22年9月13日発基17号/昭和63年3月14日基発150号/平成20年9月9日基発0909001号(管理監督者の範囲)/昭和52年2月28日基発104号の2・105号(スタッフ職の取扱い)
  • 日本マクドナルド事件(東京地方裁判所 平成20年1月28日判決 労働判例953号10頁)
  • ことぶき事件(最高裁判所第二小法廷 平成21年12月18日判決 労働判例1000号5頁)
  • 関西事務センター事件(大阪地方裁判所 平成11年6月25日判決 労働判例765号34頁)

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この記事を書いた人

行政の経験を活かす社労士。就業規則・企業型DC・給与計算・助成金が専門。条文を現場で使える形に翻訳して届けます。

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