MENU

パートも社長1人の会社も対象?社会保険の加入要件と手続きの盲点

新しく従業員を雇ったとき、パートの勤務時間を増やしたとき、「この人は社会保険に入れる必要があるのか」を最初に判断するのは事業主です。このテーマで迷いやすいのは、次のような点です。

  • 法人なら従業員数に関係なく加入するのか、代表者1人でも入るのか
  • パート・アルバイトは週何時間から加入対象になるのか
  • 本人が「扶養の範囲で働きたい」と希望したら加入させなくてよいのか
  • 役員や試用期間中の人はどう扱うのか
  • いつまでに、どこへ届け出るのか

この記事では、健康保険・厚生年金保険の加入要件の基礎と、資格取得の手続き・届出を怠った場合の扱いを整理します。短時間労働者の適用拡大(従業員51人以上の企業の追加要件)は別記事で扱います。

目次

この記事の結論

社会保険は、適用事業所に常用的に使用される人であれば、国籍や本人の意思にかかわらず当然に被保険者になります。正社員かどうかは要件ではありません。パート・アルバイトも、1週間の所定労働時間と1か月の所定労働日数がともに通常の労働者の4分の3以上であれば対象です。加入するかどうかを労使の合意で選ぶことはできません。

条文の根拠

健康保険法第3条第1項 この法律において「被保険者」とは、適用事業所に使用される者及び任意継続被保険者をいう。ただし、次の各号のいずれかに該当する者は、日雇特例被保険者となる場合を除き、被保険者となることができない。(以下略)

厚生年金保険法第9条 適用事業所に使用される七十歳未満の者は、厚生年金保険の被保険者とする。

被保険者となる要件を満たした場合、本人や事業主の意思にかかわらず、法律に基づいて資格取得日が定まります。資格取得の効力は保険者等の確認によって生じますが、届出の有無によって加入するかどうかを選択できるものではありません(健康保険法第39条第1項、厚生年金保険法第18条第1項。2026年9月13日現在)。

加入の判断は「適用事業所」と「使用される者」の2段階で行う

社会保険に加入するかどうかは、まず事業所が適用事業所か、次にその人が常用的に使用される者かを順に確認します。どちらも満たせば、原則として加入します。

適用事業所には、強制と任意の2種類があります。法人の事業所は、業種や従業員数を問わず原則として強制適用で、代表者1人だけでも、その代表者が法人から役員報酬を受けて被保険者となる場合は加入手続きが必要です。ただし、無報酬の役員しかおらず被保険者となる人がいない法人は、日本年金機構の案内上、適用事業所の要件を満たさず新規適用を受けることができません。

個人事業所は、常時5人以上を使用する法定の適用業種であれば強制適用です。2022年10月1日からは、弁護士・税理士・社会保険労務士などの士業の個人事務所も適用業種に加わりました。5人未満の個人事業所などは、従業員の半数以上の同意を得て申請し、認可を受けることで任意適用事業所になることができます。

使用される者かどうかは、雇用契約の名称ではなく実態で判断します。継続的に労務を提供し、その対償として報酬を受けていれば、試用期間中でも日給・時給でも被保険者です。法人の代表者・役員も、法人から労務の対償として報酬を受けていれば被保険者になります。

パート・アルバイトは「4分の3基準」で判断する

所定労働時間が短い人は、次の両方を満たすと被保険者になります。

  • 1週間の所定労働時間が、同じ事業所で同様の業務に従事する通常の労働者の4分の3以上
  • 1か月の所定労働日数が、同じく通常の労働者の4分の3以上

たとえば通常の労働者が週40時間・月20日勤務であれば、週30時間かつ月15日以上が目安です。どちらか一方でも4分の3未満の場合は、企業規模に応じた短時間労働者の適用拡大の要件(週20時間以上など)で判断します。

契約上の所定労働時間または所定労働日数が4分の3未満でも、タイムカード等で確認した実際の労働時間または労働日数が直近2か月にわたり4分の3以上となり、今後も同様の状態が続くと見込まれる場合は、その所定労働時間または所定労働日数を4分の3以上として取り扱います。ただし、最終的には労働時間と労働日数の両方が4分の3基準を満たす必要があります(2016年10月1日施行の取扱い)。扶養内勤務を希望する人の契約時間だけを短く設定し、恒常的な所定外勤務で補う運用は避け、契約と勤務実態を定期的に照合する必要があります。

「本人が入りたくない」という理由で加入を見送ることはできない

要件を満たしていれば、本人の希望にかかわらず加入は必須です。「扶養の範囲で働きたい」「手取りを減らしたくない」という申出があっても、労使の合意で加入を免れることはできません。

いわゆる「年収の壁」への対応策は、加入要件そのものを変えるものではなく、当面の負担軽減策として別途講じられているものです(具体的な内容・期間は要確認。最新の取扱いは所管官庁の資料で確認してください)。加入の可否は、あくまで所定労働時間などの客観的な要件で判断します。

手続き上の義務

要件を満たす人を使用するに至ったときは、事業主が5日以内に「被保険者資格取得届」を年金事務所(健康保険組合に加入している場合は組合にも)へ提出します。

資格は実際の入社日・要件充足日にさかのぼって発生します。そのため届出が遅れると、保険料をさかのぼって徴収されたり、その間の傷病手当金などの給付手続きで支障が出たりします。契約時点で加入対象かどうかを判断し、入社日に合わせて届け出るのが基本です。

届出を怠ると罰則・遡及加入・給付上の支障につながる

事業主が正当な理由なく資格取得届を提出しない、または虚偽の届出をした場合、健康保険法第208条第1号および厚生年金保険法第102条第1号により、6か月以下の拘禁刑または50万円以下の罰金の対象となります。拘禁刑への用語変更は2025年6月1日に施行されています。

また、調査によって過去の加入要件充足が確認されれば、資格取得日にさかのぼった加入手続きと保険料負担が必要になります。未加入によって健康保険給付や将来の年金額に不利益が生じた場合は、従業員との民事紛争に発展する可能性もあります。

よくある質問

Q. 週30時間勤務のパートですが、契約期間が2か月です。加入は必要ですか。

契約期間が2か月以内でも、就業規則・雇用契約書等に「更新する場合がある」と明示されている場合や、同じ事業所で同様の契約が更新された実績がある場合は、2か月を超えて使用される見込みがあるものとして入社当初から加入対象になります。

一方、当初は更新しないことを労使双方で明確に合意していたものの、後から延長することになった場合は、更新が見込まれるに至った日(延長について合意した日)に資格を取得します。形式的な契約期間だけで判断せず、更新条項・更新実績・労使の合意内容を確認してください。

Q. 従業員が前職の任意継続や国民健康保険に入っています。二重加入になりませんか。

新たに要件を満たした時点で、自社の社会保険の資格取得届を提出します。任意継続被保険者の資格は、自社の健康保険の資格を取得した日に喪失するため、従業員は従前の保険者の案内に従って資格確認書等を返却します。国民健康保険については、市区町村で脱退の届出が必要です。事業主は入社日・要件充足日を基準に届け出ます。

一次情報・参考資料

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!

この記事を書いた人

行政の経験を活かす社労士。就業規則・企業型DC・給与計算・助成金が専門。条文を現場で使える形に翻訳して届けます。

コメント

コメントする

目次