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就業規則の作成義務は何人から?「常時10人以上」の判断基準

就業規則の作成義務について、これから整備する中小企業の総務・経営者向けに解説。「常時10人以上」の数え方、意見書添付を含む届出手続き、違反時の罰則を、労基法89条・90条の条文に沿って整理します。
目次

この記事の結論

就業規則の作成・届出義務は、「常時10人以上の労働者を使用する使用者」(労基法89条)に課されます。この「10人」は事業場単位で数え、雇用形態を問いません。届出には労働者代表の意見書添付が必要で、義務違反には罰則があります。

条文の根拠

労働基準法第89条は次のように定めています。

常時十人以上の労働者を使用する使用者は、次に掲げる事項について就業規則を作成し、行政官庁に届け出なければならない。次に掲げる事項を変更した場合においても、同様とする。

作成だけでなく、変更時も届出が必要な点に注意してください。

「常時10人以上」の数え方(4つの判断軸)

(1) 「常時」=常態として10人以上か

「常時」とは常態として10人以上を使用していることを指し、一時的な人数変動は判断材料にしません。普段8人の事業場が繁忙期だけ臨時で11人になっても義務は生じません。逆に、普段10人の事業場で1人退職し一時的に9人でも、代替採用を予定していれば該当します。

(2) 雇用形態は問わない

正社員だけでなく、契約社員・パート・アルバイトも雇用形態を問わず全員カウントします。

業種シナリオ:飲食店で正社員2名+シフト制のアルバイト9名を常用していれば、合計11名で作成義務が発生します。「正社員は少ないから不要」という誤解が、この型でもっとも多く見られます。

(3) カウントから外れる人

  • 派遣社員:派遣元でカウントし、派遣先では数えません。
  • 役員・業務委託の個人事業主:労働者ではないため対象外です。

(4) 事業場単位で判断する

会社全体ではなく事業場ごとに数えます。支店・営業所が複数あるなら、それぞれで10人以上かを確認してください。本社20人・支店5人なら、義務があるのは本社のみです。

届出と「意見書の添付」も義務

89条は作成と届出の両方を義務づけています。さらに労基法第90条により、就業規則を届け出る際は労働者側の意見を聴き、その意見書を添付しなければなりません。意見を聴く相手は、事業場の労働者の過半数で組織する労働組合、それがない場合は労働者の過半数を代表する者です。正社員だけでなくパート・アルバイトも含めた全労働者の過半数で判断する点に注意してください。

ここで誤解が多いのが「意見=同意」という理解です。90条が求めるのは「意見を聴く」ことであり、「同意を得る」ことではありません。そのため代表者が「反対」と記載しても、意見を聴いた事実に変わりはなく、その意見書を添付して届け出れば手続上の問題はありません。

過半数代表者の選び方にも要件があります。管理監督者は労働者代表になれず、会社が代表者を指名することもできません。投票・挙手など民主的な方法で選出する必要があります。会社指名の代表による意見書は、手続きの瑕疵となります。

届出先は事業場の所在地を管轄する労働基準監督署長です。なお本社と各事業場の就業規則が同一内容なら、「本社一括届出制度」でまとめて届け出ることも可能です。

違反した場合の罰則

作成・届出義務に違反すると、労基法第120条第1号により30万円以下の罰金の対象となります。周知義務(労基法第106条)違反も同様です。

補足:届出と効力は別問題

実務論点として、未届出の就業規則の効力があります。フジ興産事件(最高裁平成15年10月10日判決)は、就業規則が法的規範として拘束力を持つには、適用を受ける労働者への周知手続きが採られていることを要すると判示しました。つまり効力発生の要件は「周知」であり、届出とは別です。ただし届出を怠れば行政指導や罰則の対象になり得るため、届出は確実に行いましょう。

10人未満でも作成を勧める理由

10人未満なら作成義務はありません。ただし統一的なルールを定め労使トラブルを防ぐ観点からは、10人未満でも作成しておく実益は大きいといえます。

事業拡大のフェーズでは、9人から10人を超えるタイミングは管理が手薄になりやすいものです。義務発生後に慌てて作成するより、9人の段階から(理想を言えば従業員を雇い始めた時点から)準備を進めておく方が、内容を吟味する時間を確保できます。

よくある質問(FAQ)

Q. 就業規則を作成後、総務部のキャビネットに備え付けて誰でも読める状態にしていますが、従業員から「見たことがない」と言われました。この対応で法的な「周知義務」を果たしているといえますか?

A. 単に備え付けているだけでは不十分と判断されるリスクがあります。就業規則の効力を発生させる「周知」の要件として、従業員が「必要なときに容易に確認できる状態」にしておくことが求められます。備え付け場所を明確に知らせていなかったり、社内イントラネット等でいつでも閲覧できる状態にしていなかったりすると、いざという時に「規則が無効」と判断されるおそれがあるため、保管場所の周知やデータ共有による閲覧環境の整備が必要です。

Q. 就業規則本体とは別に、細かい運用ルールを定めた「内規」や、特定の慶弔金(金一封など)に関するルールを設けました。これらも就業規則の一部として労基署へ届け出る必要がありますか?

A. 内容が労働基準法第89条に定める「絶対的・相対的必要記載事項」に該当するかどうかで判断します。例えば、賃金、退職手当、安全衛生などに関する事項であれば、別規程や内規という名称であっても就業規則の一部とみなされ、作成・変更時には過半数代表者の意見聴取と労基署への届出が必要です。一方、恩恵的な見舞金など法的な記載事項に該当しないものであれば、届出の義務はありません。

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この記事を書いた人

行政の経験を活かす社労士。就業規則・企業型DC・給与計算・助成金が専門。条文を現場で使える形に翻訳して届けます。

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